ポイ探の菊地崇仁氏が、エンリッチ読者のライフスタイルにマッチするクレジットカード、あるいはポイントサービスの付加価値を見出す本連載。今月は新カードの情報やプレムアム系クレジットの新サービスを紹介する。−−−
エンリッチ読者の皆さま、ポイ探の菊地です。前回は新たに営業を始めたソフトバンク系のPayPay銀行のサービス内容、さらには金融機関におけるポイント活用についてまとめました。これまで、共通ポイントはショッピングで獲得するのが一般的でしたが、銀行取引でも付与するサービスが増えています。
SMBCは三井住友銀行と三井住友カードのポイントを共通化するなど、画期的な取り組みも始まりました。消費者の金融機関選びに影響するかもしれません。フィンテックの台頭で構造改革に迫られる銀行は、新たな価値の創出に注力しているので、今後もユニークなサービスが生まれるでしょう。ここでも取り上げたいと思います。
大手百貨店グループが
株主専用のクレジットカードを発行
まずは、4月に発行が始まった、新たなクレジットカードの紹介から始めましょう。それが、J.フロント リテイリングによる株主優待クレジットカードの「パルコお買い物ご優待カード」です。
「PARCO(パルコ)」といえば首都圏を中心に展開するファッションビルで、なかでも渋谷PARCOは若者カルチャーを象徴する店舗。札幌や静岡、名古屋、大坂・心斎橋、福岡など主要都市にも展開しています。運営する株式会社パルコはセゾングループの一員でしたが、2020年に大丸や松坂屋など老舗百貨店を持つ、J.フロント リテイリングの完全子会社になりました。
これに伴い変更されたのが、パルコの株主優待です。J.フロント リテイリングの傘下になるまで、同社はセゾンカードから優待カードを発行し優待券を進呈していましたが、これらを廃止することに。それに代わり、J.フロント リテイリングはクレディセゾンとパルコと提携し、株主優待特典として、PARCO店頭やオンラインストアでの買い物が請求時に1年間5%オフになる「J.フロント リテイリング株主様 パルコお買い物ご優待カード」の発行を始めました。
同カードは株主優待なので、J.フロント リテイリングの株式を2月末・8月末時点で100株以上所有する18歳以上の株主が申し込むことができます。国際ブランドはMastercardで、入会費・年会費はかかりません。
同カードの特徴は、5%の割引に加えて、ショッピング利用時は1000円につき永久不滅ポイントも1ポイントたまることです。また、カードを提示するとPARCO店舗内の直営ギャラリーで開催する有料のイベントに本人と同伴者1名まで無料で入ることができます(一部のイベントは対象外)。
注意したいのは、有効期限についてです。同カードでは申込日に関わらず、到着日から翌年5月末日までが有効期限として定められています。仮に今年12月に申し込み来年1月に届くと、その年の5月末までしか使えないということです。ただし、毎年2月末の時点でJ.フロント リテイリングの株主名簿で株主番号に変更がなく、100株以上の継続保有が確認された場合は、有効期限満了前に更新カードが届きます。よって、保有中に株式を売却すると翌年のカードは届きませんし、再び株主になったとしても株主番号は変わる場合がありますので、その際は改めて申し込む必要があります。
J.フロント リテイリングは大丸と松坂屋での買い物が10%割引になる「J.フロント リテイリング株主様 大丸・松坂屋ご優待カード」も発行するなど、割引系の特典がしています。これらの百貨店やPARCOを利用する人にとって、付加価値を発揮します。
株主優待といえば商品やサービスの優待、自社製品の進呈が目立ちますが、最近はJ.フロント リテイリングにようにプラスαの特典を用意する企業も増えました。上場企業にとって、安定株主の獲得は、それだけ重要な課題だということです。今後も、個性の際立つ優待があれば紹介しましょう。
−−−株主限定のクレジットカードとはユニークな試み。株主なら持っておくと便利だろう。次回は、プレミアム系クレジットカードが始めた、新たなサービスを紹介しよう。