Q
「最初に作るべきスーツは、どういうものですか?」
A
「紺かグレイの無地で、スリーシーズン着ることができるものがいいでしょう。
フランネルなどは、最もテーラーらしい素材のひとつです
」
——では、本当にフルオーダーを作るとして、まず一番最初に作るのは、どういうものがいいでしょうか?
「やはり、無難なのは、無地。そしてスリーシーズン着ることができるものでしょう。長く着られますからね。生地の重さで言うと、1メートルあたり、240〜280gのものです」
——具体的に、おすすめの一枚はありますか?
「壹番館オリジナルの生地はおすすめです。英国の織元に、直接オーダーして作っているものです。紺とチャコールグレイがあり、スーパー200’s(スーパーは糸の細さの単位で、200’sは、極細、最高級クラス)で、ウール50%、カシミア50%です。価格はスーツ一着あたり、40万円〜ですが、普通に買ったら、100万円以上すると思いますよ」
——この生地は、本当に素晴らしいですね。私もこの生地で、スーツを作りたくなって来ました。
「ぜひぜひ。普通スーツの生地は一着あたり3mなのですが、われわれは、まるまる一反(60m)買い付けるので、この価格でご提供できるのです。リスクは高いのですが、いいお客様に恵まれているので、こういった仕入れができるのです」
Q
「季節ごとのおすすめの生地を教えてください」
A
「意外に思われるかもしれませんが、夏はカシミア、春は麻などいかがでしょう」
——それでは、次にそれぞれの季節でおすすめの生地を教えてください。まず夏はどうでしょうか?
「意外に思われるかも知れませんが、サマーカシミアはいかがでしょう。カシミアといえば、冬の素材だと思われがちですが、海外では夏にもカシミアを着ます。向こう側が透けるほど薄いので、思った以上に涼しいですよ。それから、モヘヤ混は夏の定番です。シャリっとした感じが、涼しげです」
——冬向けの素材といえば、何がいいでしょうか?
「定番はグレイのフランネルでしょう。オリジナルの100%カシミアのフランネルは、初めての方におすすめです。いつかは、というところなら、ビキューナという最高級素材がありますよ。ジャケットで一着220万円から、コートだと300万円から、となります。弊社は実はこのビキューナの生地を、単独の店舗としては、世界一売っているのです」
——それはすごいですね。他にも珍しい生地はありますか?
「英国でしか手に入らない、数量が極めて限られている生地が、入って来ることがあります。例えば先日、ドーメル製のキュビアック100%というスーツ地が入りました。キュビアックというのは、アラスカにいるバッファローみたいな動物です。織元がテストとして織った生地で、たった10mだけしかありませんでした。もうすべて、売れてしまいましたが」
——ジャケット用の生地でおすすめなのは?
「厚手の麻はいかがでしょうか? 日本では麻といえば、夏の素材となっていますが、海外では春や秋にもよく着られています。厚手の麻は着込むほどに風合いが出て、いいものです」