Q
「採寸のときに気をつけるべきことは何ですか?」
A
「Tシャツ、ジーパンは避けるべきでしょう」

——初めて採寸に臨む際、気をつけなければいけないことはありますか?
「お客様として気をつけていただきたいことは、Tシャツにジーンズような格好は止めて頂きたいということです。きちんと測ることが出来ません。テーラーとしては、いつもお召しのワイシャツの襟の高さなど、知りたいものです。また、どういったタイプのスーツが好きなのかも探りたいと考えていますので、気に入っているスーツがあったら、それを着て来て頂きたいと思います。いわば採寸も、コミュニケーションの場なのです」
——採寸される間は、まっすぐ立っているだけですよね?
「採寸をされる際は、どうしても胸を張り、ぐっと体を反らせてしまいがちですが、いつもそんな姿勢をしている人はいません。リラックスして、力を抜いた状態で採寸を受けるほうがいいのです。人間の体は、左右対称ではありません。肩は通常利き手側が下がっていて、それを補正するために同じ側の腰がやや上がっているものです。そういう微妙なところを、テーラーにわかってもらうことが大切です」
Q
「仮縫いというのは、どういったことをするのでしょう?」
A
「仮縫いが一番大切だと考えています。ビスポーク(注文服)とは、ここでの会話で、作り上げていくものなのです」

——オーダーならではの工程、“仮縫い”では、どんなことをするのですか?
「われわれは工程のなかで、仮縫いが一番大切だと考えています。ここでの会話で、洋服を作り上げていくのです。お客様の体の上に完成前の布が乗るのは、唯一この機会しかないのですから、ここでトータルなフィット感を見るのです。例えば、同じ胸囲90cmだとしても、いろいろな90cmがあります。身長180cmの方と160cmの方では、同じ90cmでも、全然違うのです。体型というものは、採寸だけでは決してわからないものです」
——壹番館は、他のテーラーとはひと味違った、仮縫いの方法を実践されているそうですね。
「はい。私どもの場合、仮縫いの時に、袖がついておりません。まずお客様にちゃんちゃんこのようなものを着て頂き、肩部分をばらしてそこに肩パッドを入れて、その後袖をピンで留めて、形を見ていくのです。肩部分と腕の取り付け部分は、スーツのなかで最も大切なところなので、そこのフィッティングを完璧にするために、こういった方法をとっています。中には、仮縫いだけで、5時間もかかるお客様もいます」