Q
「おすすめの生地はありますか?」
A
「私しか持っていない、とっておきをお見せしましょう」
——おすすめの生地をいくつか見せてください。
「まずはスイスのアルモです。ここはとにかく柔らかく、風合いがよく、しかも長持ちするのです。番手が太くても柔らかい。なんでも、ヨーロッパの水は硬水で、それを使うと生地も硬くなってしまうのですが、アルモは自社で水を引いてきて、超軟水に処理してから使うのだそうです。軟水だと芯まで色が入るので、発色もいいんです。それからイタリアのボンファンティ。通常シャツ時というのは150cmなのですが、ここは90cm幅専門のメーカーです。昔の織機を使っているので、打ち込みが甘く、まるで羽衣のような生地です。有名なカルロリーバと同じ織機ですが、こちらのほうがリーズナブルです」
——とっておきのメーカーがあるとお聞きしましたが。
「チェアーマンというインドのメーカーです。なんとスワッチが木箱に入っているんです(笑)。聞くところによると、インドの大金持ちが半分趣味でやっているメーカーで、とにかく驚いてしまうようなハイスペックな生地を作っています。例えば、340番手という極細のスリープライなど、普通では有り得ないでしょう。ちなみにこれで一着作ると、17万円です。このブランドを揃えているのは、日本では私だけだと思います」
Q
「さまざまな体型への対応はできますか?」
A
「むしろ体型の補正がないと、不安になります」
——体型への対応は、どうやってするのですか?
「特に多いのは、やはりお腹が出ている人なのですが、これは“腹グセ”と呼ばれるテクニックで対応します。第四ボタンのあたりだけを広げることによって、うまくお腹が収まるようにするのです。首が太かったり、いかり肩だったり、なで肩だったり、人の体はさまざまです。左右でも必ず違います。そういった体型に対応できることこそ、オーダーシャツの強みなのです。逆に、まったく補正が必要ない人は、『何か、見落としたんじゃないだろうか』と、こちらが不安になりますね(笑)」