今回の Concierge その2
五十嵐徹さん(パンタロナイオ)
1987年、福島生まれ。大学在学中に、自らのブランドを立ち上げてしまうほど服好き。その後、コム デ ギャルソンのデザイナーだった、田中啓一氏に師事。パンツ専門職人の尾作隼人氏やアンブロージに影響され、大卒と同時にパンタロナイオを志す。愛知のパンツ職人のもとで修業の後、独立。独自のカッティング、縫製技術で、着心地とシルエットの美しさを両立させている。
Q
「オーダーパンツの魅力は何でしょうか?」
A
「シルエットと履き心地を両立させているところです」
——オーダーパンツならではのアドバンテージはありますか?
「細くてキレイなシルエットと、履き心地を両立させられるところが、最大の魅力だと思います。普通パンツというものは、シルエットがキレイだと、履き心地が悪くなり、履き心地を優先させると、シルエットがカッコ悪くなるものなのです。私のパンツの場合は、ヒザ位置などのバランスを微妙に変え、視覚効果を利用して、細く見せているのです。例えば、このパンツの裾幅はとても細く見えますが、実は21cmもあるのです」
——これは驚きました。どう見ても19cmくらいの感じですね。これで履き心地もよく、動きやすいのですね。
「動きやすさを得るために、生地をバイアスで使うというテクニックも使っています。生地は斜めに伸びますよね。これをうまく配置して、ストレッチ生地ではないにもかかわらず、伸縮性を持たせているんです。またお尻の部分は、長い生地を短く縫う“殺し込み”と呼ばれる方法で、窮屈にならないように工夫しています」
Q
「オーダーならではのディテールはありますか?」
A
「ヒップポケット、使っていますか?」
——オーダーならではのディテールを教えて下さい。
「私のパンツは、ベルトレスが多いのです。ベルトがなくても履ける、というのが一つのこだわりですから。サイドアジャスターをおつけすることが多いですね。それからあくまでも飾りとして、プリーツを入れることをおすすめします。私の場合は内向きの、インプリーツを入れることが多いですね。ちなみにインプリーツはドレッシー、アウトプリーツはスポーティと覚えておいてください」
——やはりフロントはボタン留めですか?
「基本は3つのボタンを使ったボタン留めですが、オーダーのうち半分くらいがファスナーを使ったものです。実はファスナーのほうが、作るのは難しいんですよ。ファスナー自体には、伸縮性がないですから。また夏用の薄い生地などにはファスナーのほうがいい場合もあります。ボタンだとアタリが出てしまうのです」
——裏地等はいじれますか?
「もちろん様々なものを選ぶことができます。ここではシャツとパンツを同時にオーダーされる方も多いので、そのシャツ生地をパンツのウエスト裏に貼ったりもできます。また裏地は通常キュプラですが、夏場だとべとつくことがあります。そこで吸湿性のいいコットンリネンの裏地を使ったりもします」
——あれ、このパンツにはポケットがありませんね。
「ヒップポケットって、使っていますか? お客様に聞いてみたところ、実は多くの人が使っていませんでした。そこでこれを取ってしまうこともできます。そのほうがシルエットはキレイになります」