最近ファッションの世界では、エキゾチック・レザー、特にクロコダイルが大ブームだ。価格の高さにも関わらず、一流ブランドや専門店がリリースするクロコのバッグやグッズに、裕福層の人気が集中している。「高いものから売れていく」というのは、ここでも同じなのである。
しかし、これほど選ぶのが難しい素材もない。一口に「ワニ革」と言っても、その種類は千差万別で、最高級のものから、安価なものまで、ありとあらゆるクロコダイルが出回っている。素人には、その差を見極めることが難しく、しかも「クロコダイル」という言葉の定義も、どうやら誤解されているようなのだ。
そこで今回は、日本有数の専業メーカー、ザオー産業にて、34年のキャリアを持つコンシェルジュにご登場頂き、誤解の多いエキゾチック・レザーについて、徹底的に解説してもらった。コレさえ読めば、あなたも今日から“目利き”である。
今回の Concierge
柳原英一さん(ザオー産業 代表取締役社長)
1951年、東京生まれ。1960年創業の老舗であり、月産300アイテムを誇るエキゾチック・レザーの専門メーカー、ザオー産業にて代表取締役を務める。この道34年のキャリアを持ち、ありとあらゆるレザーを扱ってきた。その目利き力は、業界随一といえる。
Q
「エキゾチック・レザーには、どういうものがありますか?」
A
「いろいろございます。しかし昔と比べると、ずいぶんと種類が減りました」

——巷ではエキゾチック・レザー、特にクロコダイルがブームですよね。これはいつ頃から始まったのでしょうか?
「クロコダイルがファッション・アイテムとして認知されたのは、ここ10〜15年くらいだと思います。これはひとえにマット仕上げのクロコが出て来てからですね。それ以前は、クロコと言えば、すべてシャイニング(光沢)仕上げばかりだったのです。しかしこれは、ちょっと普通の人には抵抗があった。
それから私がこの世界に入った30年ほど前は、ワニ革といえば、ゴツゴツした背中部分を使っていました。腹側を割いていたのですね。ところがいまは真逆で、使うのはお腹の革で、背中側を割くのです。これによって素材はよりソフトになり、さまざまなアイテムを作れるようになりました。これが、大きいと思います」
——なるほど。柳原さんは、もう34年もこの世界におられるわけですが、昔と今とでは、いろいろと変わったのですね。
「そうです。まず扱っている革の種類が変わりました。私がこの会社に入った頃は、とにかく革の種類が多かった。今ではなくなってしまったものも多くあります。例えば、カメ。これは甲羅ではなくて、手足の甲を使うのです。ワニに似ているんですよ。それからジャクルシー。これはワニとトカゲの中間のような生物です。それからセンザンコウ。これはハリネズミやアルマジロに似ています。あとはカバ、エレファント、エミュウなど。なくなった理由は、人気が落ちたというのもありますが、やはりワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引)によるところが大きいですね」
——現在扱っていらっしゃるのは、どんな革ですか?
「クロコダイル、オーストリッチ、パイソン、リザードなどです」
——本題のワニは後回しにして、まずはその他のレザーについて、教えていただけますか? まずはオーストリッチから。
「オーストリッチは、ダチョウのことです。牛革に近く、丈夫な素材です。南アフリカのクライン・カルーという会社のものが、一番品質がいいと言われています。南アフリカには、もう何度も視察に行きました。ここのものは、一流の肉牛と同じで、エサまでもを吟味しているのです。業界では、クロコダイルとオーストリッチの人気が、10年スパンくらいで交互にやってくると言われています」

——パイソンというのは、ヘビのことですよね?
「そうです。ニシキヘビのことですね。しかしパイソンにも3種類あって、高級な方から
1. モラレス・パイソン
2. レッド・パイソン
3. ダイヤモンド・パイソン
の順番となります。
モラレス・パイソンは、模様が不規則なのが特徴です。レッド・パイソンはその名の通り、革がやや赤みがかっています。ダイヤモンド・パイソンは、ダイヤ柄が特徴なのですが、日本、アメリカで流通が最も多い種類です」

——リザードはトカゲですよね?
「そうです。品が良くて、個人的にはとても好きな素材です。欧州では大変に普及していて、フランスのカルティエなどが特にいいものを作っています。日本でも昔は草履に使われるなど、とてもポピュラーな素材だったのですが、近年あまり人気がありません。価格的にもオーストリッチに逆転されてしまいました。最高のものはリングマーク・トカゲといって、輪状の模様があるのが特徴です」

——後はエレファント、ゾウでしょうか。
「ゾウの革は、現在あまりポピュラーではありませんね。基本的にキズが多くラフな素材で、あまりキレイなものではないのです。20数年前バレクストラが凄くキレイなゾウ革のバッグを出して驚いたことはありましたが」