Q
「クロコダイルについて教えて下さい」
A
「クロコダイルと言ってもいろいろな種類があります」

——一般にはワニ革は、すべてクロコダイルだと思われがちですが、その中にもいくつか種類があるのですか?
「ワニ革には、クロコダイル、アリゲーター、カイマンの三種類があります。この中でクロコダイルと呼べるのは、文字通りクロコダイルだけなのです。それから天然ものと養殖ものがあります。魚では天然もののほうが養殖ものよりよいとなっていますが、ワニの世界では逆です。野生だとすぐにキズがつくのに対して、養殖だとキズがつきにくい。場所代やエサ代もかかります。だから養殖もののほうが高価なのです」
——クロコダイルとアリゲーターの違いというのもよくわかりません。
「もっとも混同されているのが、クロコダイルとアリゲーターの違いでしょう。これらは全く違う生物で、アリゲーターはクロコダイル科ではなく、アリゲーター科に属するのです。アリゲーターはアメリカのミシシッピ、ルイジアナ地方で採れるワニのことで、99%野生です。繁殖力が強く、養殖する必要がないのです。貿易に強いアメリカ産ということで、世界中どこでも輸出入が可能となっています。ですから、世の中に一番出回っているワニ革は、アリゲーターが一番多いということになるのです。高級時計ベルトに最も使用されているワニ革です」
——カイマンというのは何ですか?
「これもアリゲーター科のワニです。100%野生で生産地は東南アジアで、東南アジアの土産物屋で、よく売られているようなワニ革のハンドバッグなどは、これを使っていることが多いですね。別名“石ワニ”と言われ、革が固いのが特徴です。」
——それでは、クロコダイルというのはどんなワニなのでしょうか?
「クロコダイルはクロコダイル科に属するワニの総称で、その中にもランクがあります。高級なほうから並べると
1. スモールクロコ(ポロサス)
2. ナイルクロコ(ニロテクス)
3. シャムクロコ(サイミンセス)
4. ラージクロコ(ノバギニア)
の順番になります。
——まず、一番高級なスモールクロコから教えて下さい。
「スモールクロコというのは、スモール・スケール・クロコダイルの略で、決してワニ自体が小さいわけではなく、その斑が小さいのです。個体そのものは、一番大きくなります。日本語ではイリエワニ、学名はクロコダイル・ポロサスといいます。非常に凶暴であるにもかかわらず、繁殖力が低く、2〜30個の卵のうち、成体になれるのは2〜3匹だと言われています。パプア・ニューギニア産が世界一ですが、日本で手に入るのは、せいぜい20~40cm止まりです」
——それは、どうしてなのでしょうか? スモールクロコは大きくなるのですよね?
「その理由は、大型のポロサスで上級な革は、ほとんどがフランスの某一流ブランドに買い取られてしまうからです。ポロサス指定で大型のバッグを作る上顧客が、たくさんいるようですね。やはり売る方だって、高く買ってくれるところにたくさん売りたいでしょう。同じ欧米のブランドでも、クロコダイルとアリゲーターをごちゃ混ぜにして使っているところもありますから、やはりそこは別格と言えるでしょう」



——次はナイルクロコですね。
「はい、その前に養殖にも2つの方法があることを知っておきたいですね。ひとつは“ペン”と呼ばれる個別区画にワニを一匹ずつ分けて養殖する方法、もうひとつは大きな部屋で一緒に飼う方法です。前者のほうがお互いに干渉することがなく傷がつきませんが、施設への投資は膨大になるため、コストも高くなります。ワニはとにかくキズを付けないように育てるのが難しいのです。小さな頃についてしまったキズは、成体になると何センチにもなるのです」
——そうなんですね。知りませんでした。
「そしてナイルクロコですが、ジンバブエ産、ザンビア産のものがよいとされています。南アフリカ産もありますが、大部屋方式なので、品質的によくないものもあります」


——シャムクロコというのは、東南アジア産なのでしょうか?
「そうです。主にタイやマレーシアで生産されています。キズが多いところが問題ですが、ナイルクロコが細長いのに対して、胴が横に広いので、最近流行のトートバッグなど、カジュアルなバッグを作るのに最適だと言えます」


——最後はラージクロコですね。これは一番ランクが下ということですか?
「そうです。ラージクロコはインドネシア産がほとんどで、すべてが野生です。数年前までは本場であるヨーロッパでは、まったく使われていませんでしたが、今では世界的なクロコ不足のため使われることがあります。当社ではメンズ向けの一部商品のみ使っています」

