南青山界隈の洒落者たちの間で、秘かな話題を呼んでいる店がある。富士フィルム本社そば、骨董通りに面したセレクトショップ、シャロンである。2012年8月のオープン以来、ハンドメイドに特化した超高級な品揃えと、独自の審美眼が受け入れられ、倍々ゲームで売上げを伸ばしているという。
そこで今回は、シャロン代表の木下慶仁さんにご登場頂き、いま注目の南青山スタイルをご紹介頂いた。素材や縫製にとことんこだわり、デザインやコーディネイトはシンプルに徹する。いま一番都会的で、洗練されている着こなしを、余すところなくご紹介しよう。
今回の Concierge
木下慶仁さん(シャロン代表取締役社長)
1977年 埼玉県生まれ。 量販店から大手メーカー、セレクトショップまで、さまざまな形態の店舗にて販売の経験を積んだ後、2012年8月に南青山にシャロンをオープン。すべての取り扱い商品は、間に輸入代理店を挟まず、直接仕入れるというポリシーを貫く。南青山を代表するファッショニスタである。
*写真内木下さんの装い:スキャバルのヴィンテージ生地を使ったス・ミズーラのスーツ。75〜85万円(サルトリア・ソリート)、タイ3万500円(ジュスト・ビスポーク)、ス・ミズーラのシャツ4万5000円〜(モンテサーロ)、ビスポークのシューズ30万円〜(イル・クアドリフォーリオ/シャロンTel.03-6418-5131)
Q
「なぜ南青山にショップを開いたのですか?」
A
「落ち着いた街で、大人の買い物にはぴったりだと思いました」
——骨董通りの外れというロケーションは、ステイタス的には最高だと思いますが、決して人通りが多いとは言えないですよね。なぜこの場所にショップを持とうと思われたのですか?
「ショップを開くとき、あまり人が来ないところがいいと思いました。『こんなところにこんな店がある』と、探し出して頂くのが楽しいのではと考えました。そして『こんなものも、あんなものもある』という新鮮な驚きを常にお客様に与え続けたいとも。それから最も重要なことは、クルマが停めやすいということですね。われわれのターゲットである富裕層の方は、ほとんどクルマで動いていらっしゃいますから」
——お客様はどういった方が多いのですか?
「年齢的には幅広いですね。30〜60代の方までいらっしゃいます。この辺りは基本的に住宅街ですので、付近にお住まいの方も多いですね。皆様ベーシックなものをお好みになります。こだわりはあるけれど、ひけらかすのは嫌いだという人たちです。そして8割方がドレス系のものをお求めになられます」
——シャロンの一番の特徴は何ですか?
「テーラードに関して言えば、マシンメイドの品が一つもないところですね。オープン当初はマシンメイドも扱っていたのですが、ハンドメイドのほうが好評で、お客様のリクエストを聞いているうちに、オール・ハンドということになりました」
——すべての品を自社で輸入していると聞いたのですが。
「一部のブランドでは代理店を通していますが、8〜9割が自社で輸入・仕入れをしています。オープン前は、極力日本にすでにあるブランドは扱わないようにしようと思っていました。独自性がなければ、大手に勝てないですから。そこでミラノのショールームを200軒以上回って、ひとつひとつ開拓していったのです。中間マージンがないので、ウチの商品は大変リーズナブルだと思いますよ」