“カモシタ”の名は、日本よりもむしろ海外で有名かもしれない。ユナイテッドアローズのクリエイティブ・アドヴァイザーを務めるかたわら、自らのブランドCamoshita(カモシタ)のディレクターとして世界的に知られている。カモシタは日本をはじめ、欧米やアジア各国で販売され、数多くのファンを持つ。またスナップサイトの常連で、氏の着こなしに世界中が注目している。今回は、そんな鴨志田さんに、お洒落上級者になるためのヒントを伺ってみた。クラシックとデザイナーズをミックスした、遊び心溢れるコーディネイトを手本に、お洒落の楽しさ、奥深さを知って頂きたい。
今回の Concierge
鴨志田康人さん(カモシタ ユナイテッドアローズ・ディレクター、ユナイテッドアローズ クリエイティブ・アドヴァイザー)
1957年 東京・台東区生まれ。多摩美術大学卒業。学生時代はアメ横に通い詰め、テイジン メンズショップでのアルバイトを経て、ビームスへ入社。ドレスを中心に販売やバイイングを担当。1989年にユナイテッドアローズの設立に参加。クリエイティブ・ディレクターとして、商品企画、店舗内装監修まで幅広い役割を担当。長らく同社のイメージを牽引した。2007年、自らのブランド、カモシタ ユナイテッドアローズをスタート。同ブランドは、日本をはじめ、イタリア、イギリス、フランス、アメリカ、韓国、香港など、世界各国にて展開されている。
Q
「いま世界では、メンズ・ファッションの流れというのは、どのようになっているのでしょうか?」
A
「大きな潮流が二つあります。“原点回帰”と“カジュアル化”です」
——いま、大掴みに見て、世界のメンズ・ファッションの流れというのは、どうなっているのですか?
「大きく分けると2つの流れがあると思います。ひとつは“原点回帰”ということです。オーセンティックなブリティッシュ・スタイルに注目が集まっています。例えばツープリーツ・パンツなど、クラシックなアイテムが再び人気となっています」
——具体的いうと、どんな格好ですか?
ちょっと前までは、ネイビースーツに白シャツなど、シンプルな色のコーディネイトが好まれていましたが、彩りは豊かになって来ています。またツィードなど、カントリーテイストのアイテムが気分です。ちょっと野暮ったいもののほうががカッコいのです(笑)」
——もうひとつの流れというのは何ですか?
「これは一言で言えば“カジュアル化”ということですね。例えば、スーツにスニーカーというのは、もう普通になっています。よりリラックスしたスタイルへの欲求は止めようがありません。その中で、おしゃれにドレスダウンしたスタイルを成立させていくかが私のブランドのテーマでもあります」
——カモシタ・ブランドのコンセプトというのは、どういったものなのでしょうか?
「自分自身が考える“これからのクラシック”ということがテーマです。私は基本的にはクラシックが大好きで、ずっとクラシックのバイイングをしてきました。しかし、そのなかで『もっと、アグレッシブだったらいいのに』という物足りなさも感じていました。一方でデザイナーズは楽しいけれど、あくまでも一過性のものなので、『もう少し長く着られるもの、愛着を持って着られるものがあればいい』とも思っていました。カモシタはそれら2つの要素、クラシックとデザイナーズを混ぜたような存在です」
——なるほど、長く愛用できるけれど、デザインの面白さもあるということですか?
「そうです。往年のクラシック・ダンディといわれる人たち、例えばウィンザー公をはじめジャン・コクトー、フレッド・アステア、スティーブ・マックィーン、イブ・サン=ローランなども、実は当時においては、とても斬新な着こなしをしていたのです。いまではそれが定番といわれるようになりましたが、当時は非常にエキセントリックでした。そんなスタイルを、私も提案していきたいと思っています」