エンリッチ読者に相応しいオン&オフの装いを元「MEN`S EX」編集長であり、現ラグジュアリー誌「THE RAKE日本版」編集長である松尾健太郎氏の解説でお届けするコラムのはじまりです。ーーー
ENRICH をご覧の方のなかには、世界中を飛び回るビジネスマンの方も多いだろう。そこで、今回はハードな海外出張を少しでも快適にする装いのコツを探ってみた。狭いキャビンの中で、慣れない土地でのビジネスシーンで、役立つアイテムとその着こなしを、 ユナイテッドアローズのパーソナルスタイリスト、太田裕康さんに伺った。
今回の Concierge
太田裕康さん(ユナイテッドアローズ パーソナルスタイリスト兼バイヤー)
大手セレクトショップ、ユナイテッドアローズにて、パーソナルスタイリストを務める。いわゆる“外商”担当であり、北海道から九州まで、全国の顧客を受け持っている。アイテム選びや着こなしの相談に乗ることはもちろん、富裕層向けの、様々なサービスを提供している。
Q
「出張の飛行機の中で、
楽チンかつお洒落な服はありますか?」
長時間飛行機に乗らなければいけないのは本当に苦痛です。何か、楽チンで、
しかもお洒落に見えるような服はないでしょうか?
A
「ウエストがゴムで、ストレッチなのに きちんと見えるパンツがあります」
—–太田さんは、パーソナルスタイリストという肩書きをお持ちなんですね。これは、具的には、どういったお仕事をなさるのでしょうか?
「はい、これは、いわゆるデパートで言う“外商”のことです。われわれはセレクトショップなのですが、今から7年ほど前に、より顧客の方に近いところでサービスできる部署が必要なのでは? ということになり、特商部というものを作りました」
「北は北海道から、南は九州まで、お客様のところへ、こちらから出かけて行くのです。顧客の方は、主に個人事業主の方が多いですね。ですから、当然出張やプライベートで、海外へ出かける方も多く、旅の装いについては、よくご質問を受けます。それから、私自身も年2回のイタリアに加え、国内出張は年に 40 回以上を数えますから、出張の装いについては、いつも考えています」
—–出張のワードローブを考えるにあたって、何かコツのようなものはありますか?
「当たり前ですが、とにかく荷物を減らしたいという方が多いですね。余計な物は持って行きたくないと。そのためには、まず靴から決めていくことです。ワードローブの中で、靴が最も重くかさばりますから。ビジネスなら、まずレースアップのドレスシューズが一足。これにもう一つカジュアル用のシューズと、さらにスニーカー。そのくらいが限度でしょう。逆にタイやシャツが数枚増えても、たいした影響はありません」
「最初に靴を決めて、そこから何を合わせていくかを決めていくと、失敗がありません。あえて、一足だけ、というなら、私なら、オールデンのフレックスソールが使われたタッセルを選びます。オンオフ問わないし、急な雨でもある程度しのげます。出張では、土砂降りの雨に遭うことがよくあります。雨に強い服装を選ぶことも大切だと思います」
—–それでは、飛行機に乗られる機会も多いですね。キャビンのなかで長時間座っていなければならないのは苦痛ですが、何かおすすめの服はありますか?
「まずは、ストレッチパンツをおすすめしたいですね。最近では、多くのブランドがリリースしているトレンドのアイテムでもあります。ストレッチが利いていて、楽チンなのに、ドレッシーな素材で出来ていて、きちんと見えるというところが特徴です。特に、このベルウィッチのものは、ウエストがゴムで、タックも入っており、しかもかなり伸縮性のあるストレッチ素材が使われているので、座っていても、本当に楽チンです」
—–なるほど、確かに普通のウールパンツのように見えますね。これに合わせるトップスは、どういったものがありますか?
「もちろんジャケットでもいいのですが、今回は、これまたトレンドの、ざっくりしたニットを合わせてみました。少々かさばりますが、ビジネス用のコートのインナーとしても使えるので、旅先での着こなしの幅が広がります。それから、薄手で、スリムなシルエットのダウンベストも便利です。このようにアウターとしてもいいし、寒い日は、コートのインナーとしても使えます」
—–足元は、やはりスニーカーが便利ということでしょうか?
「そうですね、歩きやすさを考えると、やはりスニーカー、それもニューバランスで決まです。出張時は得てして、長時間歩かなければいけないことも多いですから。中には、『ニューバランスは、最近誰もが履いているから、ちょっと嫌だ』とおっしゃるお客様もいるのですが、やはり、履き心地ではナンバーワンです。実は、私もニューバランスだけで、十数足持っているんですよ」
Q
「パッキングしても、シワにならない
スーツやジャケットはありますか?」
スーツケースのなかに畳んでいれておいても、シワにならず、現地に着いたら
すぐに着られる便利なスーツはないでしょうか?
A
「これ1着さえあれば、
あとは何もいらないというスーツがあります」
—–ENRICH をご覧になっている方は、やはりビジネス・エグゼクティブの方が多いので、出張先でもスーツは必需品だと思います。しかし、トランクに入れてしまうと、しわくちゃになってしまいますよね。何かいい方法はないでしょうか?
「私は、スーツはトランクに入れないで、ガーメントケースを用意して、手持ちで飛行機に乗ることが多いです。手前味噌ですが、ユナイテッドアローズのスーツを買うと、おまけでついてくるガーメントがよく出来ているんですよ。ハンガーだけ、少しいい物に変えて、肩が潰れないようにして、あとはそのまま手荷物として携行します」
—–なるほど、そうすれば理想的でしょうが、やはり一般の方はスーツケースの中にスーツやジャケットをしまい込むと思います。
「そうですね。そこで、とてもいい商品があります。このスーツはユナイテッドアローズの創業 25 周年を記念して作った物ですが、まさに理想的な旅スーツなのです。素材はストレッチのきいたフランネルで出来ており、非常にシワになりにくい。素材自体が伸びるので、着ていてとても楽です。このまま飛行機に乗ってしまってもいいでしょう。無地で、ややモードっぽいシルエットなので、仕事着としても、遊び着としても使えます。またジャケットとパンツをばらばらにして、単品としても着こなせるのです」
「合わせているシューズはアメリカ、オールデン社のもので、やはりソールにゴムが張ってあるので、ある程度の防水性があります」