お洒落を楽しむ上で、大きなハードルとなるのが、体型の悩みだ。誰でもがモデルのようなスタイルをしているわけではない。太っている、背が小さい、顔が大きいなど、われわれは様々なハンデを抱えている。
そこで、今回は、伊勢丹 新宿店 メンズ館にて、体型別のスマートに見える着こなし術を伺った。同店は、スーパーメンズと呼ばれる大型サイズ専門フロアを擁し、体型に悩める人々にお洒落の福音をもたらしているという。その体験からもたらされた実践的アドバイスをお伝えしよう。
今回の Concierge
嶋崎信也さん(伊勢丹 新宿店 販売担当)
言わずと知れた、ファッション百貨店の雄、伊勢丹新宿店にて、メンズ洋品の販売を担当。伊勢丹には、“メンズ・アテンダント”と呼ばれるパーソナル・スタイリングのサービスがあり、顧客と一対一で店内を周り、様々なリクエストに応えることも多いという。ちなみに本人は、痩せすぎ体型に悩んでいるという。
Q
「とにかく太っています。
どんなスーツを買ったらいいでしょうか?」
A
「王道のストライプ柄をおすすめします。クラシコ系のドロップのあるスーツがおすすめです」
——伊勢丹 新宿店 メンズ館では、メンズ・アテンダントというサービスをおやりになっているようですね。これはどういったものなのでしょうか?
「メンズ・アテンダントとは、お客様に、担当がお付きして、一対一でショッピングのご相談に乗って差し上げるというサービスです。いわゆる外商とは違って、あらかじめ電話を頂戴し、ご予約して頂ければ、どなたでも利用して頂けます。お時間は1〜2時間程度の方が多いですね。」
——料金は必要なのでしょうか?
「いいえ、無料のサービスです。最低限買わなければいけないといった金額も設けておりません。お客様のニーズを伺って、販売のエキスパートである我々が、ぴったりの商品をご提案させていただきます。ブランドや売り場を超えての、コーディネイト・ミックスも可能ですよ。ご相談の内容は様々です。多いのは、結婚やお見合い、クールビスなどですが、なかには、『学生を前にして講演するのだが、親しみやすいようにジーンズでいいものはないか』とか、『海外へ出張するのだが、ビジネスを成功させる糸口のために、その国のブランドが欲しい』などというご相談もありました」
——なかでも、体型に関する相談は、ひときわ多そうですね。
「そうですね。伊勢丹メンズには、スーパーメンズと呼ばれる、大型サイズ専門のフロアがありますから、体型にお悩みをお持ちのお客様は、大勢いらっしゃいます。太っている方向けには、2Lから5Lサイズまで揃っていますから、ウエストでいうと、125センチくらいまでは大丈夫です。背の高い方向けには、TM、TL、TXLが揃っており、身長190センチオーバーの方にも対応できます。
『ここに来て、初めてお洒落の楽しさを知った』というお声を頂いたときは嬉しかったですね」
——いま人気のブランドも、たくさん揃っていますね。
「おっしゃる通りです。ラルディーニ、クルチアーニ、インコテックス、PT01、L.B.M.1911など、いま人気のイタリアン・ブランドから、ポール・スミス、ラルフ・ローレンなどの大御所デザイナー・ブランドまでを網羅しています。担当しているバイヤー自身も、体が大きくて、しかもお洒落が大好きなので、そういう方の気持ちがわかるんですよ」
——さて、太っている人におすすめのスーツ・コーディネイトですが、どんなところがポイントになりますか?
「やはり、くっきりとしたストライプで縦の線を強調するのがいいと思います。しかも、2センチ以内の、ナローなストライプを選びたいところです。ボタンダウン・シャツは、襟先にボタンがついたタイプをチョイス。タイはプレーンノットで締めて、コントラストが強く、シャープなVゾーンを作ってみました。全体的に、くっきりと濃く強い色でまとめるのがコツです。ベルベストのジャケットは、サイズが大きいにも関わらず、ドロップ(胸囲と胴囲の差)が大きく、イタリア製らしい、美しいシルエットが特徴です。太っている方も、ドロップの大きなモデルを着た方が、スマートに見えるものです」
Q
「やせて見えるジャケット・スタイルはないですか?」
A
「ジャストサイズで、ドロップの大きなジャケットをお選び下さい」
——ジャケット・スタイルの場合は、どうでしょうか? 太っている方に、おすすめのスタイルはありますか?
「やはり、スーツの場合と同じく、ジャストサイズで、しかもドロップ値の大きなものを選ばれた方がいいと思います。ウエストシェイプが強めのほうが、スマートに見えるのです。小さめのものを無理して着るのは最悪です。スーパーメンズには、ジャケットで、イタリアン・サイズ最大58、シャツで首回り最大48センチまで揃っていますから、体の大きな方にも十分対応できます。柄はざっくりと細かめがおすすめです。こういう素材感は今季の流行りでもあります。合わせるパンツも、流行の股上が浅めのもののほうがいいでしょう」
Q
「細めのパンツが流行っていますが、腹回りがラクで、
しかもすっきり見えるものはないでしょうか?」
A
「独自のシルエットによって楽に履ける“m039”に注目です」
——パンツは、太っている方が一番悩むアイテムですよね。特にいまは細身のものが流行っていますから、なかなか難しいのではないですか?
「いえいえ、たとえ太っていても、今風に見えるパンツがありますよ。特におすすめなのは、m039(エムゼロサンキュー)というブランドです。これは銀座のテーラーなどで修業をし、日本随一のパンタロナイオ(パンツ仕立て職人)である尾作隼人さんが手がけているもので、オーダーメイドのノウハウを使って作られています。S字カーブを描くラインが特徴で、穿きやすさは折り紙付きです。このブランドは、伊勢丹でしか買えないんですよ。」
「もう1本は、いま人気絶頂のPT01(ピーティーゼロウーノ)です。どちらも、ウエストは100センチ近くありますが、裾幅は20センチ以下です。そして股上は浅く、ヒップは高いという共通する特徴があります。太っている方には、そういうパンツがいいのです。」