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ホンダが意図する最上級セダンとは

“伝説”という名前のクルマがある。ホンダの最高級サルーン、レジェンドだ。

発表は昨年ながら発売は年を越し2015年の2月となった。発売目標は月300台。まぁ、発売直後ということもあり、いまのところ400台オーバーは順調に売れている。もちろん、バケモノクラウンと比べると控えめではあるが、ファンは必ずいる。

このクルマの特徴は、ホンダ最先端の技術が搭載されること。メルセデスがSクラスに、BMWが7シリーズにするのと同じである。

なので、 “電子制御オタク”が喜びそうなシステムがてんこ盛りとなる。そんな種類のオタクがいるかどうか知らないが、細かく見て行くと「へぇ〜」と感心するばかりだ。

たとえばそれはハイブリッドシステムにも見られる。簡単に言えば、こいつにはモーターが3つ備わる。3モーターハイブリッドだ。クルマのサイズや車格にもよるが、通常モーターはひとつかふたつ。前後どちらかの駆動輪のアクスルか、その両方で十分役目を果たす。ホンダはアコードにもハイブリッドを用意するが、そちらは2モーターだ。

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レジェンドは3つのモーターを有する

それをレジェンドは3つ搭載する。フロントに1つとリアの左右に1つづつだ。目的は左右のタイヤを独立で制御し駆動させるため。専門的に言うと、トルクベクタリング効果を発揮する。ホンダはスムーズなコーナリングを具現化するにはそれが必要と考えた。ちなみに、次期NSXもこの方式が採用されそうだ。

ここで注目したいのはその結果だ。これはあくまでもワタクシ調べの主観的なものだが、こうして制御された走りはあまり評判がよくないようだ。まわりのモータージャーナリスト、自動車専門誌編集者にレジェンドの走りを聞いて見ると、みな顔を曇らせる。その理由はじつに明確で、走りが自然でないという。つまり、この3モーター、とくにリアの2つの制御にみな違和感を得たようだ。

なぜ、そんなことを聞いてまわったかというと、じつはワタシもそう思ったから。しかも、レジェンドを走らせたのは軽自動車のスポーツカーとして今年話題のS660の直後。

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今話題のS660

その気持ちのいい走りを体感しただけに、ホンダがレジェンドで表現したいことがわからなくなったのである。

具体的にはこうだ。仕事柄クルマの走りにはメリハリをつける。直線での過減速しかり、コーナリングでのスピード域とラインの取り方しかりだ。つまり、いろいろ試してみる。すると高速コーナーでの挙動が不自然に感じてならない。きれいにトレースできるラインのはずが、電子制御が働き強制的にラインを変えてしまう。

九島辰也

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