近年のアウディブームはご存知のとおりグローバルで浸透している。デザインの街ミラノやファッションの街パリでもアウディ比率は高く、ラテンのブランドを脅かしている。
ただ、その神通力が少しずつ弱まっている感もなきにしもあらず。長年続くトレンドだが少々下降気味の傾向がある。
そんな折り訪れたポルトガル第二の街ポルトで、新型A5/S5クーペを見て、アウディのデザイン力に驚いた。その力強くかつ美しいフォルムにこのブランドの底力を目にした気がする。
新型A5クーペは順当なスケジュールでモデルチェンジを遂げた。ベースとなるA4、派生モデルのA4アバントに続いての登場だ。とはいえ、クーペという狭いマーケットを狙ってのシロモノであることからかなり大胆なデザインが施される。今回はそれが功を奏したように思われた。
それは“パワードーム”と呼ばれる膨らんだボンネットに象徴される。ロングノーズでパワフルに見せるそれが個性として発揮された。それにつながるマスクまわりもいい。セダンよりも大きめのグリル、鋭い目を連想させるヘッドライトユニットの造形などはスポーツクーペ的といえよう。
またサイドのキャラクターラインの抑揚とショートデッキ的テールエンドの仕上がりもいい。バックランプはかなりクールで、都会的だ。デザインのプレゼンテーションのときに流されたVTRでデザイナーはこう言っていた。「2、3年先のラインナップの先駆けになる要素を持ち合わせている……」と。
日本導入予定のエンジンラインナップは、252hpの2リッターTFSI(直噴ガソリン+ターボ)と190hpの2リッターTDI(直噴ディーゼル+ターボ)、それと3リッターTFSI(V6直噴ガソリン+ターボ)という設定。すべてクワトロということになる。限られたマーケット用だけに厳選された感じだ。
興味深いのは3リッターのTFSIで、こいつはボア×ストロークこそこれまでと変わらないが、ネジひとつまで新しくなっている。排気量は同じでも別物ということだ。目的はエンジン自体の軽量化にある。それまでのスーパーチャージャーをターボにしたのもそうで、パーツ点数を減らすことに成功した。またそれをVバンクの間に設置することでスペース効率も上げている。
結果生まれたV6ユニットは354hpで、0−100km/h加速4.7秒と従来よりも0.2秒短縮した。しかも省燃費も改善したことで、パワフルかつ燃費もいいという目的も実現する。