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ボルボ V90クロスカントリー

ドライバーズシートに座ったのは、V90クロスカントリーT6 AWD。2リッター直噴式直4ターボにスーパーチャージャーを装備したもので、最高出力は320ps(ヨーロッパ仕様値)を発揮する。トルクはなんと400Nm。そして組み合わされるトランスミッションは8速AT。どうやら90シリーズのデフォルトは、4気筒ターボ+8ATのようである。

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もちろん、その頂点にはSUVのXC90にラインナップされるT8、すなわちプラグインハイブリッドが君臨する。ボルボの言う“ツインエンジン”の魅力は見逃せないだろう。ただ今回の国際試乗会にはV90のT8は用意されなかった。本国にラインナップされるかどうかはわからないが、きっとクロスカントリーとの相性も悪くはないはずだ。

では、実際に走らせた印象だが、目線の高さはクロスカントリー独特であった。V90エステートの地上最低高を55mm上げたことで、通常のセダンやステーションワゴンとは異なる感覚を与える。もちろんSUVやクロスーバーとも違うのだが、雪道ではやはり車高の高さが功を奏する。すべてのアングルが深くなることで、轍や急に現れる段差に過剰に気を使わなくて済むのだ。これは深い雪道を長い距離走る上で多いに助かる。車道と歩道の境さえ見極められない状態で車高を気にしていたら疲労が重なるのは避けられない。

こうした雪上ドライブは通常のドライ路面とは趣が異なるがゆえ、わかることも多い。それは、基本的なボディ剛性の高さや前後の重量バランスのよさ、ハンドリングの素早い応答性と正確さだったりする。そこで着目されるのが、XC90にも採用された新しいプラットフォーム。“スケーラブル•プロダクト•アーキテクチャー”の頭文字をとったSPAと呼ばれるものがそれだ。文字通り大きさを自由につくれるシロモノとなる。

特徴は高い剛性やプラグインハイブリッドにも使えるバッテリーを積むスペースが確保されている点なのだが、これが大きくデザイン面にも関わっている。具体的にはフロントアクスルからフロントピラーの付け根までの距離を伸ばして、伸びやかなフォルムを形成している点だ。言ってしまえば、FR的フォルムを形成する。ボルボはキャビンを広くとれるFFパッケージの優位点を利用しながら、FRのかっこいいデザインを手に入れたのだ。

また、雪道で肝心の電子デバイスのセッティングも絶妙ですばらしい。ドライブモードが5種類あるのだが、その違いも明らかにわかる。特に大きな湖で行われた氷上テストドライブだとモードの違いが如実に走りに直結する。滑り出しからのヨンクへの切り替えと滑る前からのヨンクでは大きく異なるし、選択するギアでも走らせ方は大きく変わる。その面では、トラクションの分配から細かいブレーキ制御までじつに精緻に仕上がっているのが理解できた。低ミュー路でボルボの真骨頂を見た!といった感じである。

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といったのがV90クロスカントリーの雪上&氷上テストドライブ。今年は1997年の初代クロスカントリーから20年という節目でもあり、その価値がまた見直される可能性は高い……かも。

九島辰也

九島 辰也 (くしまたつや)

モータージャーナリスト兼コラムニスト/ 日本カーオブザイヤー選考委員。「Car EX(世界文化社)」「アメリカンSUV/ヨーロピアンSUV&WAGON(エイ出版社)」編集長「LEON(主婦と生活社)」副編集長を経て、現在はモータージャーナリスト活動を中心に様々なジャンルで活躍。2015年からアリタリア航空機内誌日本語版編集長、2016年から「MADURO(RR)」総編集長もつとめる。

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九島辰也

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