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フェラーリ GTC4ルッソT

走りに関しての印象は、総じて乗り心地がいいのが際立った。それはV12モデルもそうだったのだが、V8もそのテイストを引き継いでいる。ホイールは前後20インチでリアは扁平率35というロープロファイルながらなかなかのものだ。サーキットを熟知するフェラーリの開発陣ではあるが、グランドツアラーとしての味付けも申し分ない。テストドライブ中助手席からも「乗り心地がいいですね〜」という感想が連呼された。

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では、ワインディングではどうか。そもそもフロントエンジン搭載ながら前47:後53という重量配分の12気筒モデルをベースとしているだけあり、V8は前46:後54という配分を実現する。単純に4つのシリンダーが減った分そうなった気がしなくもないが、この辺のこだわりはじつにフェラーリらしい。ミッドシップモデルをつくり続ける経緯も関係するのだろう。極端にフロントヘビーを嫌う傾向が強い。もちろん、その方がコーナリング特性が上がるという見解なのだが、このこだわりはすごい。

なので、乗り心地の良さを先に強調してしまったが、はやりこいつはフェラーリであり、ワインディングをクルリクルリと向きを変え軽快に駆け抜ける。4WSも手伝って、タイトコーナーではステアリングを切り過ぎてオーバーステア傾向になりやすいので注意が必要だ。とはいえ、5つくらいコーナーを抜ければ、不思議なくらいカラダに馴染む。フェラーリ技術の奥の深さには本当に驚かされる。

といったのがV8エンジンを積んだGTC4ルッソTのファーストコンタクト。帰国後すぐにV12の試乗車に乗ってその差を確認したが、V8の出来映えに曇りはなかった。ただV12エンジンの高回転時のサウンドは鳥肌モノ。フェラーリはいろいろとこだわりの多いメーカーだが、中でもエンジンに対するこだわりの強さは一級品ってことなんだろうな、とあらためて感じさせられた。
 

九島辰也

九島 辰也 (くしまたつや)

モータージャーナリスト兼コラムニスト/ 日本カーオブザイヤー選考委員。「Car EX(世界文化社)」「アメリカンSUV/ヨーロピアンSUV&WAGON(エイ出版社)」編集長「LEON(主婦と生活社)」副編集長を経て、現在はモータージャーナリスト活動を中心に様々なジャンルで活躍。2015年からアリタリア航空機内誌日本語版編集長、2016年から「MADURO(RR)」総編集長もつとめる。

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