ポイ探の菊地崇仁氏が、エンリッチ読者のライフスタイルにマッチするクレジットカード、あるいはポイントサービスの付加価値を見出す本連載。今月は菊地氏のトラベルレポートとコロナ禍におけるエアラインの取り組みを解説している。(1/3から読む)ーーー
良質な顧客を対象とした
カード事業を新たな収益源にする狙い
ANAグループには、フルサービスキャリアのANA、関西国際空港が拠点で、国内の主要~地方空港、台湾などアジアの一部を対象とする単距離国際線を運航するLCCのPeachを擁していますが、2022年度を目途にANAグループの国際旅客線や貨物便を担うエアージャパンを母体に、東南アジアやオーストラリアを航路とするLCCも立ち上げると発表しました。低価格を武器に観光需要を取り込みたいと考えているようです。Peachも国際線の中距離路線を計画しているので事業が重複しますが、どのようにすみ分けを実現するのか、気になります。
航空事業以外では、ANAマイレージクラブの企画・運営、新規事業開発を手掛けるANA Xと航空券やツアーを販売するANAセールスの旅行事業を、来年4月までに統合。顧客データとウェブサイトアプリを活用したプラットフォームビジネスを展開するそうです。航空事業、旅行事業、3700万人の会員を持つANAマイレージクラブ、4兆円規模の決済額のあるANAカード事業を中核に、優良な顧客たちに個人の嗜好やライフスタイルなどに合わせたANAグループの商品やサービスを提供する方針です。ユーザーからしても、レンタカーや宿泊施設の予約サービスなどが充実すれば出張や旅行全体の利便性が上がり、ANAマイレージクラブやANAカード会員は恩恵を受けるに違いないでしょう。
ANAセールスの航空セールス事業は、地域創成事業会社にリニューアル。地域も商材を発掘・開発して、プラットフォームに展開していくと言います。11月には、自治体と連携してワーケーション商品を開発する「ANAふるさと発見プログラム」のサービスを始めました。
このように、ANAグループは航空事業を中心としつつも、それ一本から脱却する動きを見せています。他社も同様で、JALはドローンなど最新技術を展開する地域事業本部を設置、スターフライヤーは機内にプラネタリウムを投影する遊覧飛行の実施、シンガポール航空は空港にある飛行機のなかで機内食を提供、タイ航空は旅客機の座席で機内食を提供するレストラン事業を始めるなど、非航空事業に力を入れ始めています。新型コロナウイルスで航空需要が落ち込むなか、経営の多角化が進められていて、ここからユニークであったり、便利なサービスが生まれてくるかもしれません。気になるものがあれば、誌面でも取り上げたいと思います。