ポイ探の菊地崇仁氏が、エンリッチ読者のライフスタイルにマッチするクレジットカード、あるいはポイントサービスの付加価値を見出す本連載。今月最後は、クレジットカードの不正利用対策の最新トピックなどについて取り上げる。(1/3から読む)−−−
不正利用被害が過去最悪を更新
業過による対策は喫緊の課題
前回はナンバーレスカードの普及拡大について述べましたが、背景にあるのはクレジットカードの不正利用被害の拡大があります。
日本クレジット協会の「クレジットカード不正利用被害の発生状況」によると、2021年通年のクレジットカードの不正利用被害額は330億円と、過去最悪を記録しました。
キャッシュレス決済が普及するなか、不正利用対策は喫緊の課題です。これを受け、JCBと金融関連のセキュリティソリューションを展開するインテリジェントウェイブ(IWI)はセキュリティコンソーシアムを立ち上げ、業界全体の不正利用対策を推進する仕組みの構築に向けた基本合意書を10月下旬に締結。IWIの不正検知システムを導入しているカード会社から始め、2023年度中の実用化を目指すと言います。
JCBは国内の全加盟店との契約を自社で行い、加盟店情報を保有する「シングルアクワイアリング」が強みで、IWIは不正検知システムなどの高い導入シェアがあるのが強み。両社が提携することで、クレジットカードの上流から下流までを網羅的にサポートできるとプレスリリースでは述べています。コンソーシアムではカード会社各社の保有する不正検知ルールを共有する仕組みを提供するなど業界横断的な取り組みを実施し、JCBに限らず他の国際ブランドにも仕組みを提供する予定です。
国もクレジットカードの不正利用被害には頭を悩ませていて、経済産業省は「クレジットカードシステムのセキュリティ対策の更なる強化に向けた方向性(クレジット・セキュリティ対策ビジョン2025)」を公表。官民一体となった取り組みを宣言し、そのなかでは個社の不正検知システムを共同化することが有効であり、ノウハウやデータを共有することで、より高度な不正検知が実現できるとしています。こうしたことからも、2023年はクレジットカードのセキュリティ強化・不正利用対策が強化するといって間違いないでしょう。
これまでも、カード会社はセキュリティ対策に本腰を入れていて、本人認証の「3Dセキュア2.0」の導入を積極的に進めてきました。ただし、サイト側も同サービスに対応する必要があり、導入していないサイトで買い物をすると意味がありません。こうした実情を踏まえると、業界全体で不正検知のシステムがあると、安全性は高まっていくと思います。