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GEの本業回帰から分かるグローバル経済の状況

米国経済が完全に復活したことの象徴?

金融市場の関係者は、また別な見方をしている。GEの金融部門は銀行に匹敵する規模であることから、これを買収する側は、金融機関を買収するのと同じだけのリスクを抱える必要がある。このタイミングで、高値でGEの金融部門を購入する投資家が現われたということは、米国市場の先行きに対してかなりポジティブに評価していることの裏返しといえる。

現在、米国市場は金利の引き上げタイミングをめぐって非常に神経質な状態となっている。一部からは金利引き上げに失敗した場合、景気が腰折れしてしまうのではないかとの声も聞かれる。だが、少なくとも今回の金融部門売却のニュースを見る限り、そうした心配はしなくてもよさそうだ。

もしGEの本業回帰が成功した場合、重工長大な製造業の分野にも国際的な再編の波が押し寄せてくるかもしれない。この分野はGEと独シーメンスの2社が大きなシェアを持っているが、GEが本業回帰を進めていくことで、両社の寡占化がさらに進む可能性が高まってきたのである。

GEは昨年、仏重電大手アルストムのエネルギー事業を買収している。一方、冷蔵庫や洗濯機といった家電事業は、スウェーデンの家電大手エレクトロラックスに売却した。家電はGEの創業以来継続してきた事業だが、収益性が低いために売却を決断したと考えられる。高収益が見込める重電分野は積極的に買収に動いている状況だ。

バブル崩壊前までは、三菱重工や日立、東芝といった国内重電メーカーとGEの差はそれほど大きくなかった。しかし、ここ20年の全世界的な景気の拡大によって、日本メーカーとGEとの間には圧倒的な差がついてしまった。

ひょっとすると今後は、日本メーカーの一部は、GEやシーメンスといったグローバルなメガ・メーカーに取り込まれていくことになるのかもしれない。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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