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変わる日本の企業オーナー。株主還元策が強化される背景

日本企業のROEが向上する準備が整った

日本マクドナルドのトップだった原田泳幸氏はベネッセの社長に転じたが、典型的なオーナー企業であったベネッセが外部トップ招聘に舵を切ったのも同じ理由からと考えられる。

ベネッセの創業一族である福武家は、原田氏にトップを譲り、一族はあくまで社外役員として経営にタッチするだけとなっている。カリスマオーナーといわれた福武總一郎氏が経営の舵取りを行っていた時代とは大きく様変わりした。

福武一族は、生活の拠点の半分をニュージーランドに移しており、一方で、財団の運営など慈善活動を強化している。その生活様式はオーナーではなく、資本家としてのそれである。

こうした一連の動きは、投資家にとっては非常に喜ばしいことである。これまで日本の投資家は、国際的に見てあまりにも低い株主利益に甘んじてきたからである。オーナー企業は、株主の意向が経営に反映されやすく、こうした株主還元策の強化もオーナー企業ならではという面は否定できない。だが年金財政の逼迫化から、投資利回りの向上が求められている日本の公的年金も、企業に対するROE向上を強く求めるようになっている。株式市場全体の雰囲気が変わりつつある。

オーナー企業のスタンスの変化をきっかけに、株主による健全な企業の統治が進めば、日本企業の収益力は大きく向上するはずである。外部からの監視が乏しく、甘えの体質になりがちだった従来の日本の経営者に対しても、こうした動きはよい刺激となるだろう。
 

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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