冷え込んでいた日本経済も、ようやく長いトンネルから抜け出しつつある。株価も回復しはじめ、資産運用を“守り”から“攻め”へシフトさせる人も増えてきた。とはいえ、消費税や相続税の増税など不安材料には事欠かない。先行きが見通せない時代のなかで、皆は何を考え、どう行動しているのだろうか? われわれを取り巻く状況やマインドについてレポートすることにしよう。
想いやフィロソフィのないコミュニティはすぐに消える
「どうやって独自のコミュニティを作るのか? それが最大の関心事だと思います」
2009年に富裕層ビジネス研究会を立ち上げ、国内外の富裕層の行動をつぶさに見てきた船井総合研究所の小林昇太郎氏はそう語る。
「価値の高い情報は市場に流れた時点で即アウト。みなが知った途端に価値を失ってしまいます。いかに早く情報を掴むかが肝心です。希少性の高い情報になればなるほど、クローズドな場所でやりとりされます。信頼できる相手が集まる場所だからこそ、そこで共有されるのです。だから成功者たちは独自のコミュニティを持つことに高い関心を持っているのでしょう」(小林氏)
またコミュニティを作ることは自らをブランディングする効果も期待できる。いつ誰とどこで会食したのか? FacebookなどSNSに投稿すれば、交友関係をアピールすることができる。社会的地位が高い人や注目のビジネスパーソンとの会食なら影響も大きくなる。
しかし、想いやフィロソフィのないコミュニティは長続きしないと小林氏は指摘する。
「例えば、イタリアにワインの産地として有名な小さな島があります。エルバ島というのですが、同地のワインは生産量も少なく、日本に入ってくることはほとんどありません。しかし、ワイナリーのオーナーと仲が良い日本人の方が、輸入をし、一部の飲食店に卸しています。すべてはクローズドなコミュニティから発生したビジネスだったのですが、それが許されたのは同地のワインやそれを作る人に対する愛情や思い入れがあったからです。SNSも普及し、コミュニティが乱立する時代のため、ただのお金稼ぎを目的にした集まりはすぐに廃れます。異業種交流会がその最たるものです。なぜそこに人が集まるのか? 想いやフィロソフィに共感し、それを繰り返し発信し続けるからこそ、人も情報も集まってきます」(小林氏)
最高のプライベートバンクは日本国家!?
コミュニティ作りが最大の関心事だが、不動産への熱もあいかわらず高い。
「とくに海外への投資に積極的な人が増えています。少し前はシンガポールの人気が高かったのですが、価格が高騰し、富裕層でもなかなか手が出ないレベルになってしまいました。ここ最近は、マレーシア、そしてフィリピンへと投資先がシフトしています」
と小林昇太郎氏も不動産の関心の高さを指摘する。
同時に増えているのが、東京の物件に投資する海外投資家たちの動向だ。中国や台湾、シンガポールの富裕層のほか、好景気に湧くインドネシアの富裕層も集まっていると言われている。
「とある雑誌が都内のペントハウスの所有者を調べたところ、その大半が外国人だったそうです。彼らはオリンピックも開催される東京の資産価値に先行投資していますが、日本に物件を持つことに憧れやステータスを感じています。また、プライベートバンクといえば、永世中立を掲げるスイスを思い浮かべる人が多いと思いますが、一部の富裕層の間では世界で最も安全なのは日本だという認識が広がりつつあります。景気も回復し、政治も安定しています。数千年という長い歴史のなかで日本が外国からの攻撃を受けたのも数えるほどです。したがって、資産を管理する場所として、日本は最適と考える富裕層は、今後益々増えていくと考えます」(小林氏)
世界の富裕層が注目しているのは、日出ずる国、そのものなのだ。
次回は縁を広げながら、仲間を増やしている同士のエンリッチな生活をレポートすることにしよう。乞うご期待。