とはいえ、ビジネスモデルと経営者の人柄が両立しているベンチャーは多くないのが現状です。若い方だと経験が浅く、人格者にはほど遠いこともあります。それは、苦労をしたり周りから小突かられることで、人は成長するからです。これは、仕方ありません。
変な話、ビジネスモデルが良くてDIが株を握っていれば、社長や役員を総入れ替えすることもできます。あるいは、役員以下が無能なら切ってしまうという考えもあるでしょう。ですが、DIはそういった上からの力でベンチャーを抑え込むことを良しとしないので、社員は送り込むものの、過度に口は出さないようにしています。通常役員も出しません。それに、社長に人徳があり会社に将来性もあるなら、優秀な役員や社員は結局のところ残りますしね。
成功の大半は時の運が握っている
ただし、ビジネスの成否は時の運が握っていることも忘れてはなりません。すなわち、時流に乗ったビジネスは成功するということです。セブンイレブンは、いまでは日本を代表するビジネスへと発展を遂げましたが、もともとはアメリカにあったコンビニを持ちこんだというところから始まっています。ですが、工夫の連続と、日本人のニーズにマッチすることで、大成功しました。もちろん、それを察知する先見の明は経営者に求められるのですが、タイミングを見極めることもビジネスにおいては、非常に大事だということです。
例えば2000年当初は、IPOが大ブームで、IT企業を中心に多くのベンチャーが新規上場を果たしています。ところがビジネスは伸び悩み、いまや何も残っていないというところも……。創業者はIPOで儲けたのでしょうが、ビジネスは時流を捉えられなかったので、打ち上げ花火のようになってしまったのです。本当にビジネス、あるいは社会貢献を考えるなら短期的な金儲けだけに興味を持つのではなく、長期的な視点で臨んでいかないと、会社は大きくなりません。
堀紘一(ほり・こういち)
1945年兵庫県生まれ。1966年にメリーランド州立大学に留学。69年に東京大学法学部卒業後、読売新聞社に入社して経済部記者として活躍する。73年三菱商事に入社。ハーバード大学に留学して80年経営学修士(MBA with High Distinction)を取得する。81年からボストンコンサルティンググループ(BCG)に19年にわたり勤務し、89年には代表取締役社長に就任。00年にBCGを退社し、ベンチャー企業の支援及び大企業の戦略策定・実行支援を行う、ドリームインキュベ―タ(DI)を創業。代表取締役社長に就任し、02年5月にマザーズ上場、05年9月には東証1部に上場。現在は同社代表取締役会長。経営コンサルティング業界の草分けであり、財界に広く人脈を持つことでも知られ、ビジネスマン向けの著書も多数。
株式会社ドリームインキュベータ(http://www.dreamincubator.co.jp/)