前回のコラムでは私たち家族がシンガポールに移住した経緯を紹介いたしました。今回はシンガポールでの生活ぶりについてです。
シンガポールでの生活というと高層住宅での暮らしを思い浮かべる人が多いでしょう。実際に、オーチャードやサマーセットといった中心部には高層コンドミニアムが立ち並んでいます。しかし、こうした中心部から地下鉄で2-3駅行くと、街並みに余裕があり緑あふれる一戸建て住宅街が広がっています。
外国人はセントーサ島の東半分にある「セントーサコーブ地区」にしか一戸建てを購入できませんが、本島の一戸建てを賃貸することは可能で、私の知り合いの何人かも一戸建てを借りて暮らしています。もちろん、コンドミニアムにも一戸建てにはない良さがあります。その最たるものは共用施設が充実していることです。
日本ではプール付きのマンションというと超高級な物件だというイメージでしょうが、シンガポールではほとんどのコンドミニアムにプールが併設されています。シンガポールは12月・1月に雨が多くなって時々最高気温が30度を切ることもありますが、それ以外はほぼ全日30度以上のプール日和ですから、うちの子供も学校から帰ってきてほぼ毎日のようにプールで遊んでいます。最近では、プライバシーが保ちやすい一戸建てと、共用施設が利用できるコンドミニアムの良いとこ取りといえるラグジュアリーな低層コンドミニアムも増えてきています。
住居を選ぶ際に最も問題になるのがコストで、市中心部の人気エリアであれば80㎡の2ベッドルームで最低でも6,000シンガポールドル(約50万円)は月額家賃がかかります。私は東京の港区にもマンションを借りていますが、似たようなエリア・条件でシンガポールの方が1.5倍は家賃が高い感覚です。オーチャードエリアの超高級コンドミニアムの3~4ベッドルームや、ナッシムロードやブキティマといった高級住宅街の邸宅を借りる場合には月額家賃が200~300万円かかる場合も珍しくありません。
ただ、シンガポール全体でも東京23区ほどの広さで、国全体を地下鉄やバスがあまねくカバーしていますから、中心部から外れた場所に住んでもそれほど不便ではなく、そうしたエリアでは2ベッドルームで20万円程度のコンドミニアムもあります。また、HDBと呼ばれるローカル向けの公団住宅を外国人も借りることができ、同じエリアの民間コンドミニアムよりも3割以上安い賃料相場です。
シンガポールの生活で私たちが最もありがたく感じているのは住み込みのメイドさんの存在です。多くのコンドミニアムでは2ベッドルーム以上の部屋に、メイドさんのベッドルームとバスルームがコンパクトにまとめられたメイドスペースが併設されています。私たちは移住して半年後の今年の1月からミャンマー人のメイドさんに住み込みで働いてもらっています。
朝6時~夜9時まで、掃除や洗濯、食事の準備などの家事はもちろん、子供の学校や習い事の送り迎え、さらには一緒に遊んでもらうといったシッター作業まですべてお願いしています。メイドさんのおかげで妻も日中は仕事に100%集中できますし、費用も税金を含めて月約5万円と日本と比べて格安です。シンガポールにはフィリピン人やインドネシア人、ミャンマー人のメイドさんがたくさんいて、彼女たちにとっても月3~4万円の収入は母国で働いた場合の数倍の給与なので、ほとんどのメイドさんが非常に勤勉に働きます。
メイドエージェンシーには過去のクライアントからのフィードバックもまとまっているので、似た家族構成のお手伝いを経験していて、かつ評判のよいメイドさんを厳選できます。妻は、よく「メイドさん抜きの生活は考えられずもう日本には戻れない」と話しています。
シンガポールには明治屋や伊勢丹といった日本からの食材も充実しているスーパーがありますし、基幹駅の周囲には寿司、焼き肉、ラーメン、丼もの、定食、とんかつ、うどんなど各種日本料理のレストランも数多くあるので、食事の面で困ることはほとんどありません。
子供を遊ばせるプレイグラウンドも主要ショッピングモールに併設される形でたくさんありますし、ユニバーサルスタジオやシンガポールズーといったテーマパークも日本と比較して短い待ち時間で楽しめます。車で1時間ほどのシンガポールに隣接したマレーシア第2の都市ジョホールバルにはレゴランドがありますし、約1時間船に乗ればビンタン島・バタム島といったインドネシアのリゾートにも行けます。
また、シンガポールを中心とした東南アジアは世界で最もLCC(格安航空会社)が充実していて、どの都市にも割安に行けることも魅力です。ジャカルタやバンコクといった大都市や、バリ島・プーケット島などの世界的に人気のリゾートにも片道数千円で2~3時間で行けるので、週末だけで近隣諸国への旅行も手軽に楽しめ、私たちもこれらの場所を頻繁に訪れています。
移住して約1年になりますが、親はもちろん子供も楽しくシンガポール生活を送っています。次回はシンガポールの教育について紹介いたします。