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連載|加谷珪一
バーナンキ前FRB議長がヘッジファンドに

エンリチ 加谷珪一

FRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ前議長が、米大手ヘッジファンドのシニア・アドバイザーに就任することが明らかとなった。金融政策のキーマンだった人物のヘッジファンドへの「転職」に多くの市場関係者が注目している。バーナンキ氏は最近、ブログを開設し、自らの見解を積極的に公開している。影響力の大きい人物だけに、今後の同氏の発言には要注目といえそうだ。

自説を披露し始めたバーナンキ氏

バーナンキ氏をシニア・アドバイザーとして迎えるのは、米大手ヘッジ・ファンドのシタデル・インベストメント・グループである。シタデルは、大手ヘッジファンドのひとつで、現在、250億ドル(約3兆円)もの資金を運用している。

創設者のケネス・グリフィン氏は、大学在学中から金融工学を駆使したファンドを設立し、大金を稼いできた人物であり、ウォール街では伝説となっている。リーマンショック後は一時、資産額を大きく減らした時期もあるが、その後の市場の回復で息を吹き返した。

リーマンショック後、米国は金融機関に対する監督を強めている。もしバーナンキ氏が金融機関に再就職した場合、前議長という立場から厳しい利益相反規定が課せられる可能性がある。もしそうなってしまうと、彼の発言はかなり制限されてしまうことになるだろう。

だが、ヘッジファンドであればそのような規制はなく、自由に発言することが可能となる。バーナンキ氏は、現在の金融政策に影響力を行使することはできないが、これまで金融政策のトップにいた人物である。彼の発言が市場に与える影響力は大きいだろう。

当然のことだが、ヘッジファンドに所属しているということになると、ポジション・トークを行う可能性も出てくるが、仮にそうであったとしても、バーナンキ氏の発言はやはり多くの投資家が聞きたいと考えるはずだ。

バーナンキ氏は、退任直後は後任にイエレン氏の業務を妨げないよう、目立った発言を行っていなかった。だがイエレン体制が軌道に乗ってきたことから、次第に自身の見解を外部に対して示すようになってきている。

自身の住宅ローンの更新を銀行に断られた話を取り上げ、まだ住宅市場はバブルになっていないという見方を示したほか、自身の娘が、友人に父親はFRBの議長だと話したところ、グリーンスパンの子供なの?と聞かれたというエピソードを引き合いに、自分はそれほど有名ではないとジョークを飛ばしたりもしている。

最近ではブログを開設し、さらに積極的に情報発信を行っている。バーナンキ氏のブログでは、サマーズ元財務長官が主張する「米国は長期停滞に入りつつある」という説について否定的見解を示し、ちょっとした話題になった。

加谷珪一

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