日本の近代化は、絵画の技法
を学ぶところから始まった
E:アートを見るにはやはり長いスパンが必要ということですね。
北島:あとは国際情勢も価格に大きな影響を与えます。社会学を抽象化してマーケット化したものなので、社会、人間の活動に興味を持つことですね。フォン・ノイマン(※2)がコンピュータを考えるのと、アートの世界で抽象表現主義が出てくるのはだいたい同じ時期だと思うんですよ。
いろいろな人間の活動をどれだけ抽象化したら機械化できるかを追求したのがコンピュータ。対して、抽象表現主義は交通インフラが発達して言葉や肌の色の異なる人間が交流する時代に、「どれだけ具象的なものを除くと人間はみな同じになるのか?」ということを追求したものなんですね。
(※2)ジョン・フォン・ノイマン。ハンガリー出身の数学者。現在のコンピュータはノイマンが1940年代に提唱した「ノイマン型コンピュータ」が原型となっている。
E:北島さんは金融の世界で身につけた視点でアートを理解されていますが、同じ視点でアートを見ている人は周囲にいますか?
北島:海外では割と理解されやすいんですが、日本では少ないかと思います。海外と日本の視点の違いでいうと、過去に日本を作った実業家が若い画家を留学させて絵を学ばせていたのは、西洋的な近代を理解するためだったんですね。
E:「西洋的な近代」といいますと?
北島:西洋の「産業革命的な近代」を学んで日本に持ち帰るには、絵を学ぶことが一番だったと思うんです。従来の日本的な絵の描き方に、海外で学んだ西洋画の技術を組み合わせる。それが日本の近代絵画を作り出していったと思います。


E:日本の平面ベースな浮世絵に、西洋の立体感を表現する遠近法の技術を取り入れるということでしょうか?
北島:そうですね、西洋的な構図を取り入れたとでもいいますか。それまで日本人は筆を使って床で絵を描いていたから、自分の近くにあるものを手前に描いて、遠いものを奥に描く。それが、イーゼルを立てるとキャンバスの真ん中に遠くのものを描いて、端に近くのものを描くようになる。これが西洋的な近代化だと思うんです。