ところが、日本で銀行を作るには資本金が100億円は必要で、これは非現実的。承認や認可を得るだけでも時間がかかりすぎます。過去金融の自由化後に、セブン銀行や住信SBI銀行など銀行の新設が相次ぎましたが、それは巨大企業だからこそできたこと。さて、どうしたものかと思案していたのですが…そこで知ったのが投資型のクラウドファンディングという仕組みです。
これは、銀行と同じく金融なのですが、手数料で利益を生み出すビジネスモデルで、銀行のように預金者に元本保証を行うわけではありません。リスクはお客様負担になる一方で、より多くのリターンをお客様に還元できるというメリットも。これだと思い、2012年末でロイズ銀行を退社して、年が明けてクラウドクレジットを立ち上げました。ロイズ銀行で「お金が足りない国と余っている国をつなげる」という機会のポテンシャルの大きさを目の当たりにし、それをきっかけに金融機関を作ったということです。
内藤 銀行とは異なり巨額の資本が必要ないのに、資金のやり取りができるというのは、とても画期的です。これまでは大資本しかできなかったビジネスが、比較的小資本でも参入できるように変わったのですから。また、日本国内だけを見ると、低金利で運用難となりますが、世界を見渡すと、投資のチャンスはたくさんあります。
日本人は資産のほとんどを円で持ちますが、それは非効率なところにお金を置いているのと同じこと。お金が足りない国に流すことで、効率化は図れます。そのひとつが、クラウドクレジットの取り組みだということですね。リスクはありますが、リターンを取りたいという手段を日本人の投資家に提供できますし、社会貢献の意味合いも高く、事業としての存在価値があると思います。
ーーー金融機関での経験をクラウドクレジットの起業に結び付けた、杉山氏。いうなれば、お金がない国と余っている国をつなぐ、導管のような役割を担っている。しかも、両国にとってメリットにもなる。内藤氏が口にしたように、とても意義のあるビジネスではないだろうか。
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内藤 忍(ないとう しのぶ)
株式会社資産デザイン研究所代表取締役社長
一般社団法人海外資産運用教育協会代表理事
東京大学経済学部、MITスローン・スクール・オブ・マネジメント卒業(MBA)
大学卒業後、住友信託銀行に入社。
1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。
その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。
2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。
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早稲田大学オープンカレッジ、丸の内朝大学などで講師を務め、雑誌、ネットでの連載コラムを担当。主な著書にシリーズ10万部を超えるベストセラーとなった「内藤忍の資産設計塾」シリーズ。「60歳までに1億円つくる術」「「好き」を極める仕事術」「丸の内朝大学マネーの教科書」など多数。最新刊は「初めての人のための資産運用ガイド」(ディスカヴァー携書)。
杉山智行(すぎやま・ともゆき)
クラウドクレジット株式会社 代表取締役
2005年東京大学法学部卒業後大和証券SMBCに入社し、金利、為替の自己勘定取引チームで日本国債への投資業務等に携わる。2008年ロイズTSB銀行東京支店に入行し、銀行では資金部長を務めて支店経営陣に対してリテール預金の獲得など日本での事業機会について助言するなどし、同時に運用子会社の日本における代表および運用責任者を兼任し、当該子会社の財務計画および人事/経理/税務の管理も行う。2013年1月にクラウドクレジット株式会社を設立し、2014年6月から投資型クラウドファンディング・サービス「Crowdcredit」の運営を通じて、日本の個人投資家と世界の資金需要者がWin/Winの関係を作るサポートを行う。