ベントレーの心臓部
クルマの心臓部といえば、エンジン。ベントレーは、4リッターから6リッター以上の排気量、V8型、W12型などのエンジンラインアップを持つ。それぞれの詳しいスペックは自動車専門誌に任せるとして、どれにも共通して言えることは、有り余るほど強靱なパワーを持っているということ。決してピーキーではなく、トルクフルなそのエンジンは、ベントレーにふさわしい、余裕のある走りを実現してくれる。
高回転域に達しなくても発揮してくれるその力は、静粛性という別のキャラクターも引き立ててくれる。カタログによると、例えばW12型6リッターエンジンを持つフライングスパーは、「時速320Km/hに達しても、車室内は静寂と呼べる状態」だというから驚きだ。
昨今、クルマに関しては、燃費性能についての話題は事欠かない。国内外のメーカーも、燃費改善については相当な努力をつぎ込んでおり、ベントレーも同様である。例えばミュルザンヌは、6リッターもの大排気量エンジンを搭載している。しかしこのエンジンは、高速巡航状態になった際、8気筒あるうちの4気筒を自動的に休止状態にし、4気筒で走行を続ける。これによって、燃費性能は著しく改善され、高速走行時のカタログスペックでは10.1Km/Lの数字を導き出す(本国のカタログ発表値)。このクラスの大型サルーンにとっては、期待以上の値といえるだろう。
ラグジュアリーさを裏付ける、自動車としての素質
ベントレーの卓越した走行安定性には、確固たる裏付けがある。例えば、タイヤから見てみよう。
多くの高級車と呼ばれるクルマには、扁平率の高い、つまり分厚いタイヤが使用される場合が多い。そうすることにより、路面の凹凸を吸収し、乗り心地の良さを実現しようとする方法だ。だが反面、その分厚さが故に、横方向の加重には弱い、という性質を持つ。つまり、横揺れがしやすいのだ。特に重量のある車両では、この特性は顕著に現れる。ベントレーはこの方法を採用していない。
ベントレーは、20〜21インチ等の大口径ホイールと共に、35%〜45%という、扁平率の低い、いわゆる「薄い」タイヤを採用している。まるでスーパースポーツカーに採用されるようなサイズだ。このタイヤを履きこなしながらも、快適な乗り心地が実現されているのは、高度に最適化されたサスペンションシステムを搭載しているからに他ならない。大型のボディを確実に支え、上質さを感じさせるサスペンションやシャーシのセッティングは、そう簡単ではないはずである。しかしながらベントレーは各モデルにおいて、それを見事実現している。さらにシチュエーションやドライバーの気分に応じて、サスペンションの設定を時にはスポーティに、時にはコンフォートにと、自在に変更することもできる。
大口径ホイールは、シャープな印象を与え、凛とした印象を与える外観的なメリットの他に、もうひとつ重要な、安全性の確保にも役立っている。それはブレーキだ。重量とパワーを持つクルマを確実かつ安定して減速、ストップさせることは、最重要項目のひとつである。ブレーキは、そのディスクとキャリパーの大きさによって強度を確保するため、必然的にそのサイズは大型化する。大口径のホイールは、その強力なブレーキシステムをインストールするためにも、必要な条件でもあったのだ。さりげなく存在しているベントレーのブレーキは、実はレーシングカーにも劣らない強力なシステムであり、さりげなく安全性も確保しているのである。
このように、ベントレーを構成するひとつひとつのモジュールは、有機的に設計され、高度なバランスで組み立てられている。この技術の裏付けがあってこそ、最高級のラグジュアリーカーの地位を確立させているのだ。