5つのデザインコンセプトで
オーナーが求める価値を艇に昇華
「外観だけではなくインテリアにも、とにかくこだわり抜きました」と振り返るのは、『EXULT 43』のデザインを担当したデザイン本部フロンティアデザイン部の並木育男氏だ。
「『EXULT 43』はデザインオリエンテッドということで、やりがいがありつつも責任重大なプロジェクトでした。コンセプトに掲げたのは『大海原でも一目でわかるシルエット』『マリーナで主張するスタイリング』『桟橋で人を迎えるエントランス』『驚きと寛ぎで時を忘れるインテリア』『空と水平線を独り占め、歓びを分かち合うFB(フライングブリッジ)』の5つです」(並木氏、以下同)
根底にあったのは「オーナーが求める価値」を追い求め、さらに期待を超える価値をつくることで、その際は『EXULT 36』の所有者に対して綿密なヒアリングを実施。ここでわかったのが「モノづくりへのこだわり」「おもてなし空間」「上質な時間を共有したい」ということだったという。
「例えば外観はガンネルレスであり、かつてない流麗美で巨大な海洋生物をイメージさせ、日本発のメッセージとして書の作法(入り・伸び・止め・払い)を織り込み、独創的なフォルムにまとめました」
これによりシルエットは際立ち、インテグレーテッドボディの進化で美しい塊感が分断されることはなく、艇が大きく見えるので主張も申し分ない。サイドウィンドウもエッジが効いていて流麗なフォルムをさらに印象付けると同時に、ミラーガラスの採用によりプライバシーが守られ、マリーナでは周囲の景色が映り込むなど、ウィンドウグラフィックが圧倒的な存在感を醸し出し、空間自体も華やかにする。
随所に高級感を得られるデザイン
素材にこだわりストーリーを持たせた
「インテリアは曲線を基調とした『洋上の迎賓館』をコンセプトにしています。天井は高く、サロン・ギャレー・コクピットの異なる三要素をひとつにし、空間をより長く大きく感じられるようにデザインしました」
メインサロンなどに使われる部材にも注目したい。ここでは銘木家具の作り手として日本有数の技術を誇る「松創」の協力を仰ぎ、高級バイオリンにも使われるシカモア材をふんだんに使った鏡面仕上げの壁、足元には分厚いウォールナットの無垢材を使ったフローリングを採用。楽器を通じて高級素材を知り尽くしたヤマハのノウハウと松創の技術をマッチングさせた。
「サロンテーブルも熟練の職人が手掛けたシカモア材製、天板はカーボン素材を織り込んだ西陣織で『昼夜斜紋』の柄を再現しました。ラウンジソファ・チェアは本革製ですが、これだけ大きなサイズの一枚皮は珍しく、これもインテリアの付加価値を高めています。また、座ると窓から海面が見える設計になっていて、船内からも開放感が得られるばかりか、船酔いの防止効果も期待できます」
カウンタートップは耐候性に優れた人工大理石で、IHヒーター、冷凍冷蔵庫、電子レンジを備えたギャレー、レインシャワーを設置したシャワーブースなど、ハイグレードな設備は数え上げればきりがない。
「オーナーズルームはダブルベッドと高級タイシルクのファブリックを採用、トイレやメイクに使うパウダールームはメインとセカンドのふたつを設置しました。これにより、ホストとゲストのプライバシーが保てます」
光のデザインにもこだわっていて、船内では柔らかく癒しや寛ぎを演出する間接照明を多用し、船尾部分には幻想的な雰囲気を醸し出す水中ライト、その上部には夜空をイメージさせる星空ライトを設置した。
「最近はマリーナなどで船中泊を楽しむオーナーも増えています。たまには1人で夜を過ごしたい、仲間とパーティを楽しみたいといった要望に、こういったインテリアや調光でワンランク上の時間と空間をお約束します」